長崎くんち愛“からUターンを決意し地元の味を発信する

長崎くんち愛“からUターンを決意し地元の味を発信する

長崎くんち愛“からUターンを決意し地元の味を発信する

シリーズ『活躍するなら、ふるさと長崎で』をお届けします。
第3回は「チョーコー醤油株式会社」。
長崎くんちをきっかけにUターンを決意し、商品の開発や販売促進などに携わる方をご紹介します。
先輩の姿から自分自身が長崎でキラキラと輝く未来をイメージしてみませんか。

醤油や味噌をはじめ、ドレッシングやつゆ、たれ、ソースなど、多種多様な調味料で健康かつおいしい食卓を支えるチョーコー醤油。企画課に所属する山田さんは、新商品のコンセプト作りやパッケージデザイン企画、販促キャンペーン管理、HP・SNS運営など、商品を一から開発して販売するところまで一貫して携わっています。関東で進学・就職後、地元の長崎にUターンした山田さん。決め手となったのは地元で受け継がれる「長崎くんち」でした。就職までの経緯や多岐に渡る仕事内容、長崎での暮らし、今後の目標などについてお話を伺いました。

山田 昴さん

チョーコー醤油株式会社

山田(やまだ) (こう)さん

企画課
長崎県長崎市出身 入社5年目

時代の変化に合わせた調味料を県内外に発信

Q.まずは山田さんの担当している仕事内容について教えてください。

企画課としての仕事は大きく2つあり、商品を作るための業務と、商品のことを伝える業務です。作る業務としては、市場トレンドの分析や営業担当者からの情報・要望、自社のリソースや工場のキャパシティを踏まえながら、新商品を開発する上でのコンセプトを考案します。実際の中身の開発は工場担当者が手がけるので、私はコンセプトに付随したパッケージのデザイン方針の取りまとめ、商品情報の文章などを、お客さまに伝わりやすい内容で作成します。そして伝える業務としては、販促用のキャンペーンを企画したり、展示会用のチラシやパネルを作成したり、店頭ポップなどの営業ツールを担当することもあります。その他、お中元やお歳暮の商品選定やカタログ校正、新聞やテレビでのレシピ企画、HP・SNS・オンラインショップの管理まで担当しています。季節モノの商品の展開は早めの準備が必要なので、暑い時期には鍋を、寒い時期にはそうめんを提案していて、仕事上の季節感が逆になります(笑)。

Q.ここ数年で人気商品の変化はありますか。

コロナ禍の影響もあって個食ブームが広がり、例えば鍋つゆでは4人分が入った1袋の商品より、1人分の鍋つゆが4個入った商品の方が注目されています。また醤油やみりんといった調味料が最初からブレンドされた、調理つゆやめんつゆなどの時短商品も人気が高まっています。こうしたトレンドは常に意識していますし、お店に立ち寄った際には他社の商品やポップデザインを見て勉強しています。また展示会や店舗を回る営業担当者からリアルな現場の声を聞くことができて、とても参考になります。チョーコー醤油の商品は長崎県内だけではなく、全国で販売されています。地域によってニーズや売れ筋商品が異なるので、地域ごとに商品のPRも工夫することが求められます。

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Q.働く上でどのようなやりがいがありますか。

営業担当者や工場担当者と連携しながら一から商品を開発し、実際にお客さまから好評の声を聞くと嬉しいです。もともとデザインや広告について専門的に学んだ経験はありませんが、日々勉強する中で少しずつ実力がついてきたのかもしれません。企画課として、開発から販売まで一貫して切れ目なく携わることができるので、成長や学びの機会が多いと感じています。

ふるさとに戻り、長崎くんちに出演したい

Q.長崎市出身の山田さんは、関東の大学に進学。東京のIT企業、小売会社を経て、長崎にUターンしたそうですね。どのようなきっかけがあったのでしょうか。

もともと長崎くんちや精霊流しといった地元のイベントが大好きで、大学生・社会人と関東で過ごしている間も、開催日に合わせてよく帰省していました。東京で働いていた2016年の長崎くんちは、家族が縁のあった油屋町が7年に一度の踊町でした。実際に父と妹は参加していて、もちろん私も帰省して側で見ていました。最終日には自分たちの町で奉納踊が披露されました。それがものすごくカッコ良くて「自分も7年後は出演したい」と強く思ったんです。当時社会人として仕事には満足していましたが、長崎くんちがきっかけとなってUターンを決意しました。

その後準備期間を経て、2018年に長崎に戻ってきました。なかなか東京で働きながら長崎の企業を探すのは難しく、就職先は決まっていない状態でのUターンとなりました。家族はびっくりしていましたが、地元に帰ってきてくれた安心感もあるようでした。

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Q.チョーコー醤油に入社した経緯についても教えてください。

ハローワークが主催する地元企業の合同説明会があり、軽い気持ちで参加してみました。そこにチョーコー醤油がブースを出していて、たまたま当時の社長と部長がいらっしゃったんです。会社のトップといきなり深い話をすることができて、会社の在り方を具体的にイメージできました。私自身、小さい頃から料理が好きで、大学時代はほぼ毎日自炊していました。そうした経験からも、調味料を扱う地元企業のチョーコー醤油に興味を持ちました。内定後、前職で対外的な広報業務を担当していたこともあり、企画課を見据えた配属が決まりました。

Q.中途採用という形でしたが、入社後の研修などはいかがでしたか。

通常、新入社員は部署問わず製造工場で1週間程度の研修を受けます。ただ私の場合は商品開発に携わる企画課に所属される予定だったので、3ヶ月かけて工場のほぼ全ての部署を回りました。お醤油の素となる諸味の仕込みや味噌の製造、ラベル発注、生産スケジュール・品質の管理など、予想以上にいろいろな工程があることを知り驚きました。ちなみに工場のベテラン職人の方は、舐めるだけで醤油の種類が分かるそうです。

その後、1年間かけて東京支店でみっちり販売や営業について勉強しました。市場や売り方について学ぶだけではなく、スーパーなど店頭での試食販売も経験。これがなかなか難しくて、思ったように試食してもらえない難しさを感じました。メンタルが鍛えられたと思います(笑)。そして2020年4月に本社に戻り、本格的に企画課で働き始めました。会社として、研修を通してこういう能力を身につけてほしいという意図が明確だったので、スムーズに慣れることができたと感じます。

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広報に力を入れて、新旧の商品をさらにPR

Q.新型コロナウイルスの影響もあり、2020年から昨年まで長崎くんちは開催中止となりました。実際にUターンした後、長崎くんちとの関わりはいかがですか。

本来はもう踊町の年を迎えるはずでしたが、4年先延ばしになりました。ただ昨年は全ての踊町の演し物が集まる一大イベント「ながさき大くんち展」が開催されて、油屋町の一員として船を運ぶことができました。すごく重かったので、本番に向けて体を仕上げて準備したいと思います。またUターンした年から町の青年部には所属しているので、地元の催し物の運営に関わっています。今年、油屋町は踊町をサポートする年番町になる年なので、4年ぶりの長崎くんちをしっかりと支えたいです。

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Q.今後の仕事における目標を聞かせてください。

商品の企画や販促はもちろん、もっと広報活動を頑張っていきたいです。せっかくおいしい商品が完成しても、まず知ってもらわないとお店で買ってもらえません。HPやSNSでの情報発信を担当しているので、何かしらきっかけを生み出していきたいです。

そして家族構成や食卓の在り方が変わる中で、これまで長年愛され続けてきたロングセラー商品のリニューアルが必要になってきます。打ち出し方を工夫して、さらに多くの方にチョーコー醤油の商品を発信していきたいと思います。

Q.後輩へのエール

20代前半で自分のやりたい仕事や目標が明確な人はそこまで多くないと思いますし、私自身も曖昧でした。ただ縁のあった場所で働く中で、徐々に自分のやりたいことが見えてくることもあると思います。そして全く予想していなかった経験が、後になって役に立つことがあります。学生時代だけではなく、社会人になってからもいろいろな経験を通して、視野を広げてみてはいかがでしょうか。

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取材日/2023年5月31日 取材はソーシャルディスタンスに十分配慮した上で行ない、撮影時のみマスクを外しています