野田 真吾さん
口之津果樹試験場修了 34歳
大村市出身 長崎の学校卒業後、県内就職(JAながさき西海 営農指導員)のち就農。
お住いのエリア/大村市
家族構成/妻、息子1人、娘2人
勤務先/nocchi farm(のっちファーム)
社歴/4年10ヶ月
Q.長崎県で就職を決めた理由は?
友だちにからかわれてもブレなかった、
農家になる夢。
私は、生まれも育ちも大村です。親は農家を営んでおり、そんな父の背中を見て育った私は、幼稚園の頃から「将来は農家になりたい」と思っていました。周りに農家を目指す人は誰もいなくて、友だちからよくからかわれたりもしましたが(笑)、それでも農家になりたいという夢はブレませんでしたね。今思えば、それだけ夢の実現を信じていて、そうなるものだと思っていたんでしょう。なので、「長崎県で働こう」とある時に決めた訳ではなくて、必然的にそうなったというところでしょうか。
Q.現在のお仕事の内容を教えてください。
「右へならえの農業」から脱却し、
「自分が考える農業」を実践。
父の農業を継ぐのではなく、新たに「nocchi farm」を立ち上げ、全くの別経営で農業を営んでいます。
確かに、幼い頃から農業が身近にあって、その魅力に惹かれ農家になることを志したのですが、同時に私は「自分が考える農業」を実践したかったんです。
家業を継ぐのは、もしかすると自立するより楽かもしれません。父の元で働いて、給料をもらうのは簡単かもしれません。しかし、それだと甘えが出てくるのではないか。将来、自分が経営する立場になった時、十分なノウハウが身につけられているのか、と疑問に思ったんです。
私が考えるのは、「安心で、美味しく、健康の糧に」を基本とした農業。ミニトマトなどの施設野菜も栽培していますが、主となるのは「みかん」で、「みかんを作るために農家になった」と言っても過言ではないくらい、土づくりからこだわって美味しいみかんや野菜たちを育てています。
Q.自立に際して苦労などはありませんでしたか?
人とのつながりに感謝。
周りの人たちの力を借りながら農地も自分で探しましたし、創業して2年くらいは本当に辛かったですね。家内のお父さんが土木の仕事をされていて、そこでアルバイトをしながら生計を立てていた時期もあります。ただ、幸いなことにいろんな人に支えていただいて、今は「自分が考える農業」に近づいている気がします。
私は就農する前の約10年間、JAながさき西海で営農指導員として働いていました。そこでは県や市、あるいは関係の全国の方々などいろんな方と知り合いになれて、今では「これはあの人に聞けばいい」、「あれはこの人に聞けばいい」と、わからないことを聞けるつながりを持てたことが大きかったと思います。
また、人とのつながりだけでなく、営農指導員としての経験は農業の経営をしていく中でも糧になっていると実感します。そこでは、実際に農業を営んでいるプロに指導する訳ですから、栽培管理や農業経営の知識などかなりの勉強が必要ですし、実践を通してたくさんの勉強をさせてもらいました。
Q.お仕事のやりがいを教えてください。
農作物は子どもと一緒。
愛情を注げば応えてくれる。
農作物は生き物で、子どもと一緒だと思うんです。きちんと見ること、触れたりすることを増やせば増やすほど応えてくれるんです。だから私は、畑に行く時に嫌な気持ちでは入らないようにしています。「植物の気持ちがわかる」と言い切れるほど、寄り添って育てられるのはすごく幸せです。しかも、それを型にハマることなく、自分のやり方、スタイルで実践できることにやりがいを感じます。
例えば、ミニトマトの栽培も初めからやろうと決めていた訳ではありませんでした。家内のお母さんが家庭菜園でミニトマトを作っているのを見て、「主には冬場に作られるミニトマトを、夏に作ってみたい」と思ったのがきっかけです。
また、ミニトマトの裏作として、今年からキュウリの栽培にも取り組んでいます。これは、知り合いのキュウリ農家と共同の取り組みですが、「みかんを栽培したいキュウリ農家」と「キュウリを栽培したいみかん農家(私)」の思いが合致して生まれたものです。
このように、やりたいと思ったことを素直にできることや、お互いに知らないことでも協力し合うことでできるようになるといった経験は、親元では難しかったかもしれません。その意味でも、自立して新たなことにチャレンジできる今はとても充実し、毎日を楽しんでいます。
Q.休日は主に何をして過ごしていますか?
時間に制約があって、
何もできない農家にはなりたくない。
「子どもが休みなら、2泊3日で旅行に行こう」とか、宿泊先も決めずに「ノープラン旅行」とか、家族旅行を楽しんでいます。
もちろん、繁忙期は土、日、祝日に働くこともありますが、逆に閑散期には平日に休むことだってあります。
「農業に従事すると、休みもないくらいに大変」と思う人も多いと思いますが、私は、農家だからといってプライベートを犠牲にしたり、「何もできない農家にはなりたくない」と思っています。
型にハマらずに、自分のカリキュラムで行動できるようにするためにも、私は人とのつながりを大切に考えています。営農指導員からのつながりもそうですが、地域の方たちが草刈りをやっていると、「自分も、草刈りします」と、こちらから飛び込んだり、食育活動の一環で子ども会をつくり、稲作体験を地域の方と一緒に行なっています。おかげで現在は、声をかけると集まってくれる人が20名程いて、仕事とプライベートのスケジュールも立てやすいので助かっています。
Q.ライフスタイルの割合を教えてください。
難しい質問ですが(笑)。やっぱり一番に考えるのは家族のことです。仕事も楽しくてやりがいもあるのですが、それもこれも、根っこの部分を考えると、家族が幸せに暮らせるように。休日も、旅行以外でも家族のために時間を使いたいと思っています。
Q.長崎で暮らして、良かったことを教えてください。
自然に恵まれながら利便性も高い、
歴史ある住みやすいまち。
長崎県は、全国的に見ても地名度があり、異国情緒だったり歴史ある印象的な県と言えるのではないでしょうか。
中でも大村市は、大村湾を中心にまちが広がり、自然に恵まれていながらも、空港があったり、高速道路や将来的には新幹線が開通するなど交通網も整備されたり、利便性も高い地域だと思います。ゆとりを感じられる住みやすい場所。子どもを育てやすい環境。気候も温暖で、食べ物も美味しい。人それぞれ感じることはあるでしょうが、人口が増えていることが、その魅力を裏付けていると思います。
Q.長崎で暮らして、困ったことを教えてください。
恵まれた環境だから、
関心が薄いと感じることも。
農業を始めて、毎日食を欠かすことなく食べられる幸せ。私も含めて、今の人々は幸せすぎて危機感が薄いのではないかと感じることです。
長崎は自然が豊かで食べ物も美味しい。でも、そんな恵まれた環境だから、食に関して、安心で美味しいのが当たり前と思う人も多いように感じます。
人の体は食べ物でできていると言われますが、長崎の方で食に対して関心が高い人がどれくらいいるでしょうか?
長崎では安心で美味しいのが当たり前と思われている食も、実は都市圏では危機感を持って、「安心」や「美味しさ」を「選んで」います。
このような長崎と都市圏の意識の格差を緩和できるように、私たち若手農家が集まり、食の「安心」と「美味しさ」への関心を高める活動を行なっていますが、少しでも関心を持っていただけたら幸いです。
Q.これから、長崎で暮らそうとしている若者にエールをお願いします。
自分からコミュニケーションの輪に飛び込んでみる。
私自身、「もっと勉強しておけば…」と思うことが多々あります。
世の中は、自分が知らないところで動いているのがほとんどですから、目の前のことにとらわれず、いろんなことを知ろうとすることが大事だと思います。
そのためにも、自分からコミュニケーションの輪に飛び込んでみてください。
自分で調べる。自分で経験する。自分の身の回り以外のことに関心を持つ。これは、きっと皆さんのこれから先の夢の力になると思います。