シリーズ『未来に繋がる”成長分野”で働く』をお届けします。
今後の成長が期待される半導体、IT、航空機、海洋エネルギー関連のそれぞれの分野で活躍されている方を4ヶ月に渡ってご紹介します。
第3回は、航空機分野の「SPP長崎エンジニアリング株式会社」で、航空機の部品の加工に携わる方をご紹介します。
先輩の姿から自分自身が長崎でキラキラと輝く未来をイメージしてみませんか。
国内で唯一、官民航空機のランディングギア(飛行機のタイヤ付近の足まわり)の整備を専門的に手がけているSPP長崎エンジニアリング。機械を扱う部署で、ブッシュと呼ばれる航空機の部品を加工している大西さんは、小さい頃から飛行機が大好きでした。大学で専門的な航空整備について学びますが、4年次の春に新型コロナウイルスが感染拡大し、希望していた航空関連企業の採用がストップ。それでも夢を諦めきれず、卒業後もフリーターとして就職活動を継続する中で、航空業界においてもニッチな事業を展開するSPP長崎エンジニアリングの募集を知り採用に繋がりました。全国的にも珍しい仕事内容や入社までの経緯、夢見た仕事に取り組む気持ち、長崎での暮らしなどについてお話を伺いました。
SPP長崎エンジニアリング株式会社
大西 豪さん
整備部 整備3課
鹿児島県出身 入社1年目
最高水準の正確性と品質が求められる航空機部品を製造
Q.まずは大西さんの担当している仕事内容について教えてください。
1987年にANAの航空機装備品の整備を行う子会社として誕生した当社は、2014年から住友精密工業のグループ会社となりました。主な事業はランディングギアのオーバーホール(分解・点検・修理など)です。官民航空機のランディングギアのオーバーホールを専門的に手がけているのは当社が国内唯一で、非常に珍しい事業を展開しています。
基本的にはものづくりではなく修理が事業の中心ですが、私が所属する部署では金属部品の機械加工を行っています。具体的には、ブッシュと呼ばれる真ん中に穴のあいた円形の部品の製造で、その大きさや種類は様々です。温度変化による金属の膨張を利用して隙間なくピッタリと軸にはめ込むため、作業には精密さが求められます。計測器の使用前点検やブッシュの温度管理は特に気を配る部分です。
Q.入社1年目の大西さんですが、どのように技術を学んでいますか。
実際の作業を先輩に教わりながら、少しずつできる仕事を増やしています。航空機の部品は機体を軽くするために安全マージンが少なく設定されており、少しでも削りすぎると部品が使用できなくなります。そうしたデリケートな作業を当たり前のように、進める先輩方は本当に凄いなと思います。もっと技術を学びたくて、自分から居残りして作業を見学することもあります。先輩によってやり方も異なるので、自分なりにうまくアレンジして取り入れたいです。この仕事は、一人前になるまで10年かかると言われました。まだまだ先は長いですが、それだけ深みがあって面白いとプラスに感じています。
幼い頃からの夢を諦めず、卒業後にチャンスを掴む
Q.鹿児島出身の大西さんは、航空機の整備について学べる地元の第一工科大学に進学。普通科高校から進学したそうですが、もともと飛行機は好きだったのでしょうか。
小さい頃は両親に連れられて鹿児島空港によく足を運んで、展望デッキから飛行機の離着陸を眺めていました。そこからどんどんのめり込んで、夏休みの自由研究では飛行機の写真を撮って機体を紹介したこともあります。いわゆる飛行機オタクですね(笑)。そこから自然と、将来は航空機の整備に携わる仕事がしたいと夢見るようになりました。ただ第一工科大学を選んだ理由はもう一つあって、高校から取り組んでいた陸上部の駅伝を大学でも続けたかったんです。地元に両方の希望を叶えられる大学があって幸運でしたし、勉強も部活も自分のしたいことができた4年間はとても充実していました。
就職活動では航空関連の企業を志望して、大学での企業説明会にも積極的に参加しました。そんな中、ちょうど大学4年次の春に新型コロナウイルスが流行し始めて、航空関連の企業の採用が軒並みストップしてしまったんです。周りの多くの学生は諦めて、一般企業の会社員や公務員になってしまいました。私も周りから心配して声をかけていただいたところもありました。ただ自分はどうしても航空業界に入りたくて。結局就職しないまま卒業して、フリーターとして就職活動を続けることにしたんです。
Q.そこからどのようなきっかけでSPP長崎エンジニアリングに入社したのでしょうか。
卒業後は、在学中からお世話になっていたアルバイト先の居酒屋でそのまま働きながら、ハローワークやリモートの企業説明会に参加していました。お店には自衛隊や航空関連企業の方がお客さんとして来ることもあり、仕事や会社に関する情報もたくさん聞く事が出来ました(笑)。
そんな中、たまたま人から聞いた情報で、SPP長崎エンジニアリングの募集を知りました。実は大学時代に参加した、県主催の「長崎県航空機産業セミナー」で一度話を聞いたことがあり、こうした飛行機の“脚”に特化した企業があるんだと視野が広がった思い出がありました。そんな好印象からチャレンジしてみようと思い、オンラインでの選考を通過して入社に至りました。結局、地元の鹿児島でのフリーター生活は1年半くらい続いたことになります。両親には申し訳ない気持ちもありましたが、やりたいことを自由にさせてもらえて本当に感謝しています。
Q.希望していた航空関連の企業に就職できて、率直なお気持ちはいかがですか。
採用の知らせを聞いたときは、やっぱり嬉しくてテンション上がりました(笑)。会社に入ること自体が初めてですし、実際の工場で働くことができて新鮮な気持ちです。そして目標としていた仕事に就くことができて、シンプルに毎日が楽しいです。知らないことを知ることができた、失敗したから次はこうしようと、とにかく毎日勉強できる環境に恵まれています。
新生活を満喫しながら、ものづくりの技術力を着実に磨く
Q.長崎での暮らし、休日の過ごし方についても教えてください。
現在は諫早市に住んでいますが、車社会である事と初めての土地に慣れるのに苦労しました。特に片側二車線は今でも苦手です。もともとラーメンが好きなので、休日はラーメン屋さん巡りをしています。一日に二軒回ることもありました。あとは高校から大学までやっていた長距離走を趣味として続けていて、一人で練習したり、たまに会社の仲間と走ることもあります。先日は五島市のマラソン大会にも出場しました。種目別で6位に入賞できて嬉しかったです。
Q.今後の仕事における目標を聞かせてください。
当社は社内資格が細かく設定されており、専門知識を身につけた上で資格を取得し、徐々にできる仕事の範囲を広げていきます。まだまだ入社したばかりなので、扱うことができる機械を着実に増やしていきたいです。そしてこれからもっと経験を重ねて、先輩たちのように難しい作業を自分もできるようになりたいです。
Q.後輩へのエール
少しでも気になる企業の説明会には、自分から積極的に足を運ぶのがオススメです。人から聞いた印象と、自分が直接見たり聞いたりして感じた印象は大きく異なります。私自身、在学中にたまたま参加した企業説明会がきっかけで、夢だった飛行機に携わる仕事に就職することができました。やりたい仕事が決まっている学生は、諦めなければいつか叶うと信じて、ぜひ頑張ってほしいと思います。
取材日/2023年9月26日 取材はソーシャルディスタンスに十分配慮した上で行ない、撮影時のみマスクを外しています