新シリーズ『理系を生かして活躍する』を4カ月にわたってお届けします。
第1回は「イサハヤ電子株式会社」で、新規事業化のためのプロジェクトチームに所属して電源回路の開発に取り組む社員の方をご紹介します。
先輩の姿から自分自身が長崎でキラキラと輝く未来をイメージしてみませんか。
国内外に拠点を設ける半導体企業のイサハヤ電子。身近な電化製品に使用されるディスクリート半導体と、電力を変換するためのパワーエレクトロニクスという2つの分野を軸に事業を展開しています。新規事業化に向けたプロジェクトチームに所属する大門さんは、自社で実績のない電源回路の開発を担当。よりエネルギー効率の高い製品の実現を目指しています。先端技術に携わる仕事内容や入社のきっかけ、諫早での暮らしなどについてお話を伺いました。
イサハヤ電子株式会社
大門 隆哉さん
新規事業化プロジェクト システム電源開発研究所
長崎市出身 入社3年目
より高効率な電源回路の開発に向けて尽力
Q.まずは大門さんの担当している仕事内容について教えてください。
私が所属するシステム電源開発研究所では、自社で実績のない回路方式・制御方式を用いた電源回路の開発に取り組んでいます。具体的には、業務用空調や冷蔵冷凍庫、半導体製造装置などに使用される業務用の電源回路で、従来よりエネルギーを無駄にしない、より高効率な性能を目指します。現在私が担当しているのは、DC/DCコンバーターという電圧を変換する回路の開発です。
製品ができるまでの大まかなの流れとしては、まず電圧や電力などを仕様書にまとめた上で、実際にどのような回路方式や素子を用いるのか検討します。その後、基板やケースなどの構造を設計した上で試作品を作り、その評価を行います。この一連の流れを何度か繰り返した上で製品として完成させて、量産化を担当する部署に引き継ぎます。
Q.仕事をする上で、苦労ややりがいを感じるのはどういった時ですか。
自社で実績がない製品開発に取り組む上で、予想外の課題やトラブルが発生することも珍しくありません。途中で行き詰まり、手探りで試行錯誤する苦労はありますが、それだけ乗り越えた時のやりがいは大きいです。自分の頭の中で対策や原因を考えることで、知識や経験につながる部分はあります。しかし、考えすぎても時間が無駄になってしまうので、ある程度の見通しを立てたらとにかく行動してみることも大事だと思います。トライアンドエラーを繰り返す仕事なので、忍耐力と行動力が必要だと感じています。
Q.システム電源開発研究所は新しい部署だそうですね。
入社当初に配属されましたが、その時点でまだ2年目の新しい部署でした。メンバーは6人で、私のような若手社員が半数。経験豊富な社員が半数という構成です。とはいえ年長者も40代で、こうした若いメンバーに新規開発の業務を任せていただけるのは光栄ですし、より一層頑張ろうというモチベーションが高まります。それぞれ責任を持って個別の製品を担当していますが、分からないことがあれば気軽に相談できる風通しの良い環境です。月に1度くらいのペースで飲み会をしていて、若手だけで2次会をすることもあります。仕事やプライベートの話を気兼ねなくできる関係性なので、とても働きやすいです。
ものづくりへの思いを地元で実現
Q.長崎市出身の大門さん。地元の工業高校に進学して、最初は就職を視野に入れていたそうですね。
具体的な仕事はイメージできていませんでしたが、とにかくものづくり系の仕事に就きたいと考えて、高校時代はさまざまな資格を取得していました。そこから大学進学を目指すようになったきっかけは、高校2年生の時に見た地球温暖化に関するニュースです。再生可能エネルギーが対策になると紹介されていて、もっと詳しく知りたくて地元大学の工学部に進学。電気電子分野を中心に学ぶ中で、電力を制御するパワーエレクトロニクスがテーマの研究室に所属しました。熱中できる研究分野と環境に恵まれて、さらに学びを深めようと大学院にも進み、学会発表などを経験しながら充実した6年間を過ごしました。
学部生の頃はロボコンサークルに所属して、全国大会に出場しました。自分たちで一から設計・試作しながら完成度を高めていく工程が、ものづくり分野の幅広いスキルを身につける貴重な機会となりました。また他学部・他学年の学生たちと一緒にロボット作りに取り組む中で、コミュニケーション力が向上したと感じます。
Q.イサハヤ電子に入社したきっかけについても教えてください。
就職と大学院進学で悩んでいた大学3年時に、イサハヤ電子の1dayインターンシップに参加した経験がありました。当時から回路設計の分野に携わりたい気持ちがあり、それが地元の長崎県内でかなえられる企業だったため、大学院修了後の進路としてすぐに頭に浮かびました。OBもたくさんいますし、大学院の研究室でイサハヤ電子と共同研究を行ったこともきっかけの一つです。
Q.システム電源開発研究所に配属されて、仕事はうまく慣れることができましたか。
すぐに開発中の製品の評価を任されたのですが、かなり実践的な内容でした。すごく役立っていると感じたのは、これまで持ち続けてきたものづくりに対する気持ちです。高校で基礎を学び、大学で専門性を深めながら、ロボコンサークルでは横断的に技術を実践する機会に恵まれました。また研究室では論文作成と合わせて製品開発にも取り組んでいて、作業の流れは現在の業務と共通しています。もちろん異なる点として、今は企業として納期を守ることや利益を生み出すこと、高い安全性が求められます。そういった課題をクリアするために努力するのは自分に向いていますし、仕事ならではの面白さを感じています。
ものづくりの成果を企業の利益に結びつける
Q.諫早での暮らしはいかがですか。
大学時代は長崎市内の実家から通っていたので、就職を機に諫早市で一人暮らしを始めました。最初は街のことをあまり知りませんでしたが、ドライブしながら見て回るうちに雰囲気が分かってきました。日常的に車を使うようになったので、今も実家には気軽に帰省できています。また高校・大学の友人と頻繁に会えるのも地元就職ならではだと思います。
Q.休日の過ごし方についても教えてください。
もともとサッカー観戦が趣味で、国内外問わずいろんなチームの試合を観ています。諫早市で働くことが決まってから、地元チームであるV・ファーレン長崎を応援するようになり、トランスコスモススタジアム長崎(諫早市)に足を運び始めました。もうすぐ長崎スタジアムシティ(長崎市)が完成するのが楽しみで、ぜひ現地で試合観戦したいです。このほか、魚釣りに出かけることもあります。県内にはいろんな釣りスポットがあるので、場所に困ることがありません。地元の友人と一緒に釣りをする時間がいい息抜きになります。
Q.今後の仕事における目標を聞かせてください。
まずは、現在担当している案件を着実に完了することを目標として、その後の新しい案件もスケジュール通りに進められるよう努力していきます。そして製品を作ることがゴールではなく、きちんと会社の売り上げにつなげて貢献することが大切だと考えています。部品や素子、回路方式、ソフトウェア設計など、さまざまな分野の知識がまだまだ足りないので、これからどんどん新しい技術を取り入れながら学んでいきたいです。
Q.後輩へのエール
仕事を選ぶ上で、自分の中では回路設計分野という軸は最初から定まっていました。ただ本当にそれでいいのか見極めるためにも、造船系など分野が異なるものづくり企業の説明会やインターンシップにも参加しました。そうすることで自分の選んだ道に自信が持てましたし、迷わず就職活動に臨めました。いろんな業界や仕事を知るためにも、どんどん会社説明会やインターンシップへの参加をお勧めします。そこでの経験や感じたことを通して、本当に自分がやりたい仕事の方向性を定められると思います。
取材日/2024年7月23日