池西 希さん
早稲田大学卒業 28歳
埼玉県出身 大学卒業後、東京の大手銀行に就職。その後Iターンで長崎へ。
お住いのエリア/諫早市
家族構成/妻、子1人
勤務先/株式会社V・ファーレン長崎
社歴/1年4か月
Q.長崎県で就職を決めた理由は?
V・ファーレン長崎やジャパネットグループ全体が進めている、
長崎のプロジェクトに魅力を感じました。
私は、埼玉県さいたま市の出身で、幼少の頃よりずっとサッカーをやってきました。実家は、浦和レッズのホームスタジアムの近くにあって、サッカーが文化として根付いている地域で育ってきたんです。本当に「サッカーとともに人生を歩んできた」と言っても過言ではないくらいで、プロのサッカー選手になるのが夢でした。しかし、自分にはプロとして成功するイメージが湧かなくて、大学卒業後に銀行に就職することにしたんです。
銀行では5年間働かせていただいて、多くのことを学ばせていただきましたし、素晴らしい時間だったと思います。ただ一方で、サッカーから離れる時間が増える中で常に心の中には「サッカー」がありましたし、「このままでいいのか?」と思っていました。
結局、1年ほど悩んだ末、「社会人として積んだ経験を、サッカーに活かせるのではないか」、何より「自分の人生の幸せのために」と、サッカー関係の仕事に就こうと決めたんです。
Jリーグクラブは現在、56クラブあるんですが、その中でも「V・ファーレン長崎」に就職したいと思ったのは、事業に取り組む姿勢がすごいと感じたからです。例えば、ジャパネットグループ全体が進めている「スタジアム構想」。民間でスタジアムをつくるといったことは、今までになかったおそらく日本初の試みですし、地域創生に真剣に取り組む姿勢に魅力を感じました。
Q.長崎に移住することに、ご家族の反応はいかがでしたか?
悩んでいた私の背中を、妻が押してくれました。
嬉しいことに、反対されるどころか妻は背中を押してくれました。
実は、転職を悩んでいた時期に、私はスポーツビジネスの学校にも通っていたんです。その姿を妻は見てくれていて、「早く行ったほうがいいんじゃない?」と言ってくれたんですね。
私の親や、妻の家族も「いいクラブに行くことができる」と理解をしてくれて、とても心強かったです。
Q.現在のお仕事の内容を教えてください。
アカデミーに所属する選手が競技力も人間力も
成長できるよう取り組んでいます。
V・ファーレン長崎アカデミー(クラブの下部組織チーム)のマネジメントをさせていただいています。具体的には、チームのスケジュール管理や遠征先のホテルの手配など多岐にわたります。
また、アカデミーに所属する選手たちの3年後、5年後を見据えて、「どう育てて行くのか」といった企画戦略を、トップチームの業務を行う強化部と連携し、コーチングスタッフと一緒に練ったりもしますし、一方でホームタウン活動を行うタウン推進課と連携して、「ピースボランティア活動について」のディスカッションや、「平和について」考える機会を設けたりもします。
これは、V・ファーレン長崎アカデミーが、競技力だけでなく、人間力も高い人間へと育成することを目的としているからで、選手たちに様々な経験を積ませることで、サッカーだけでなく一般社会人としても世界で活躍できるようにと願うからなんですね。
実際には松田浩育成部長や森保洋ヘッドオブコーチングが現場を見られますが、その現場がより充実したものとなるように形にしていくのが私の仕事内容だと言えるのではないでしょうか。
Q.お仕事のやりがいを教えてください。
自分の人間形成の中で
大きなウエイトを占めるサッカーに携われることが幸せです。
「私の人生はサッカーと共にある」というようなことを前にも話しましたが、実は長崎に来てからサッカーボールに触っていないんです(笑)。このことも驚きなんですが、でも、「それが嫌ではない」ことに気づいてしまって(笑)、もっとびっくりしました。「自分はサッカーに携わっていればいいんだ」ということが分かったんですね。
私にとってサッカーは、プレーすることももちろん大好きなんですけど、それよりもっと、その中で得た経験や知識が自分の人間形成の大きなウェイトを占めているくらい大切なものなんです。そんな、サッカーを軸に業務にあたれることは、何よりの幸せだと感じます。
V・ファーレン長崎というクラブ内において、トップチームの成績がもちろん注目される機会が多いですが、アカデミーの存在もクラブとしては重要なポイントです。その重要な業務を多くの方と協力し進めれることは大変やりがいがあります。
今回初めて、U-18のチームが全国大会に出場しました。長崎県は、国見高校や島原商業高校など全国大会で好成績を残したチームもありますが、全国的に見るとサッカー強豪県ではないと思います。今回出場した選手たちも「全国大会は人生で初めて」という子どもたちばかりでした。
対戦チームはコンサドーレ札幌や柏レイソルのユースチームといった全国経験豊富なチームで、2分1敗の結果に終わったんです。ただ、スコアは0-0、1-2、1-1と十分に渡り合えることを証明してくれたんですね。
これは、中長期的なこれまでの積み上げの形だと思いますし、これからもっと上がることが期待できる結果だと思います。
強豪チームの個の力に対して、V・ファーレン長崎アカデミーはチーム力で戦っていこう、その上で個の力も底上げしていこうとするスタイル。選手たちの「負けたくない」という気持ちが連鎖して、協力して頑張っている姿。これは「競技力も人間力も高い人間を目指す」育成理論にも通じていて素晴らしいチームの姿だと思うんです。
そこに私が関われること。強化部やコーチングスタッフ、さらにはあらゆる部署の方々と一緒に未来を見ることができるのはとても幸せなことです。
私はかつて、浦和のアカデミーに所属していて、「そこで育ってよかった」と今でも思っています。
長崎でも、「ここで育ってよかった」と思う人が1人でも多く育ってくれるよう、これからも頑張っていきたいと思います。
Q.休日は主に何をして過ごしていますか?
家族で公園に行ったり、
長崎でできた仲間、友人と遊びに行ったりします。
基本的には妻と子どもと過ごしています。
最近は新型コロナウイルスの影響で不要不急の外出は控えていますが、以前は水辺の森公園やこどもの城などがお気に入りの場所でしたね(笑)。ボール遊び禁止の東京の公園とは違い、長崎の公園は子どもを遠慮なく遊ばせられるので最高です(笑)。 また、職場の仲間や妻の友人家族と遊びに行ったりもしています。
Q.ライフスタイルの割合を教えてください。
勤務形態は基本的に週休2日のシフト制です。
生産性が重要視されるので、残業も少なく、休みもしっかりとることができます。
銀行に勤めていた時も、ある程度時間が決まった働き方ができていると思っていたんですが、今はその時よりも時間が見えていると思います(笑)。
おかげで家族との時間もとりやすく、大変ありがたいです。
Q.長崎で暮らして、良かったことを教えてください。
アウェイチームを受け入れる姿勢、
選手たちへのあたたかな拍手に長崎の人の素晴らしさを感じます。
ご飯が美味しいこと。駐車場が広く、飲食店で座敷があるのは子ども連れには助かりますね。お店が空いている割合も高くて、並ばなくていいのも嬉しいです。
そして、何と言っても人が優しい。道端ですれ違った中学生に「こんにちは」って挨拶されて、感心しました。
また、私の実家が、浦和レッズのホームスタジアムの近くにあることは話しましたけど、そこはホームゲームがある土日は、熱狂でまちが動くような感覚になるんです。本当にサッカー熱が凄くて。ただ、そうであるがゆえにホームチームが負けてしまった時は大変になる時もあります。いいとか悪いとかではなくて、それが浦和の文化だと思うんですけど、同じように長崎にも独自の文化があると感じています。
V・ファーレン長崎のホームゲームで、サポーターの皆さんのアウェイチームを受け入れる姿勢は本当に素晴らしいと思いますし、例えホームチームが負けたとしても、選手たちにあたたかな拍手をおくる姿に愛を感じます。
このような素晴らしい長崎らしさを、サッカーを通してこれからどんどん加速させていきたいですね。
Q.長崎で暮らして、困ったことを教えてください。
地元から離れたとしても、繋がりを感じられる時代。
困ったことは特にありません。
車がないと移動しづらいこと以外、本当に特にないんですよね。
Iターンで長崎に来て、学生時代の友人に会いにくくなるのが寂しいかな、と思っていたんですけど。今はSNSなどで誰が何をしているというのがすぐにわかる時代ですよね。人によっては毎日、あるいは1日に何回も情報をアップしていて、それを見るだけでも繋がっている感じがしているので、それほど寂しさも感じません。
Q.これから、長崎で暮らそうとしている若者にエールをお願いします。
地理的ネックは障害になりません。
自分の「やりたいこと」にまっすぐチャレンジしてください。
長崎を語れるほどではありませんが…
新型コロナウイルスの影響で大変な時期だとは思いますが、気づいたことがあります。例えば、働き方。私も4月中旬から5月末まで、リモートで作業を行なっていましたが、現場での仕事は別として、事務所作業などは顔を合わせなくてもできるんですね。
ZOOMなどを利用すれば、学びや出会いなども障害は少ないと思いますし、情報入手のスピードも差を感じません。つまり、地理的ネックは昔ほど障害にはならないということ。実際、私も都心で暮らしたこともありますが、生活様式は特段変わりません(笑)。
長崎で勤務をすること、生活することはそこまでネックにはならないのに、「長崎だから」という理由で諦めるのはもったいないのではないでしょうか。
自分が「したいこと」や「頑張りたいこと」が長崎にあるのであれば、それに「ありつける幸せ」を追い求めて欲しいと思います。
取材日/2020年7月29日 取材は、ソーシャルディスタンスに十分配慮した上で行なっています。