こんにちは!まちブログのアウトドア担当の米重です。今回は前回のキャンプでコーヒーに興味が出てきたので、コーヒーの卸売、販売、カフェをやられている”カリオモンズコーヒーロースター”の伊藤寛之さんを訪ねてきました。
コーヒーど素人の私に丁寧にコーヒーのことやお店のことなどを教えていただきました。
カリオモンズコーヒーロースター長崎店
今回はカリオモンズコーヒーロースター長崎店の中で取材させていただきました。店舗は樺島町の電車通りから一本内側に入った静かなところにあります。このビル確かリノベーション物件で一時期注目されていました。
―コーヒーのお仕事を始めたきっかけは何ですか?
伊藤:18歳くらいの時にカフェでバイトしていて、そこでコーヒーを入れるということはやっていたんですけど、雑誌でコーヒーの特集が載ってて福岡のそのお店にコーヒーを飲みに行ったときに今まで自分たちが出していたものと全然違うものが出てきてそこでコーヒーの味というのに興味を持ちました。
もともと農業に興味があったのでコーヒーに畑があるっていうのは何となく知ってたんですけど、そこで初めて味というのを通して生産国とか興味を持ちだしたっていのが始まりですね。
―最初はどちらに行かれたのですか?
伊藤:お店を立ち上げるまでは当然コネクションもないので生産国に行くというのはリスクでしかないので、最初は日本の商社からコーヒー豆を購入する形で開業したんですね。それから2009年にオープンして2011年だから一年半後かな。初めて産地に行ったんです。その時始めていったのがニカラグアという国でした。
―昔内戦があった国ですよね
伊藤:そうです。その時にエルサルバドルにも行きました。こちらも内戦が長かったところなんですけど。
―コーヒー産地はそういう国が多いですよね
伊藤:多いですね。そういう内戦でエルサルバドルの場合は生産がストップしてしまってました。それまでは中米だけじゃなくて世界のコーヒー生産国の中でも2位か3位かぐらいの生産量を誇っていたんですけど、内戦があってその影響で今はもう生産量が減って放棄地も増えていました。ただ産地としてのポテンシャルがすごく高いので今はもう生産数も品質も上がってきている感じですね。そういう国ばっかりですね。
―店名の由来は何ですか?
―自分が調べたときはコーヒーの儀式という風に書いてあったのですが
伊藤:エチオピアですね。「カリオモン」というのがコーヒーのセレモニーという意味です。もともとは「カリオモン」は違う意味があって、コーヒーの葉っぱという意味と、コーヒーを共に供するという二つの意味がある言葉になってるんです。なのでもともとは一緒にお茶をする間柄をさすような言葉だったんですね。親しい間柄とか。それが転じて今はコーヒーセレモニーみたいな儀式っぽい行事っぽい意味がつけられています。僕としてはオリジナルの意味で、コーヒーを飲む親しい間柄っていう意味でいい言葉だと思って使っています。
―いらっしゃるお客さんはどのような方が多いですか?
伊藤:長崎の店舗は新しいんですけど、時津のほうはもう12年目に入っててそっちのほうは下は高校生から上は70代80代ぐらいまでご年配の方まで。かなり幅広い年齢層の方が来てますね。あと年に二回くらい中学生が職業体験に来ます。なので年齢のモザイクとしてはかなり複雑ですね。
―お客さん同士の交流というのもありますか?
伊藤:ありますね!一番多いのはご年配の方と子育て世代の方が来ると小さな子供を通じてコミュニティやコミュニケーションが生まれていきます。やっぱりコーヒーショップやカフェというのは社交場ですから、そういったボーダーを取り外すということをしたくて、それも屋号に含まれていますね。
―16,7世紀ごろのコーヒーハウスのようですね。
伊藤:そうですね。政治に対する討論を行ったりとか意味合いが強かったですね。なので法律で制限された時代もあったり。
新しい珈琲体験
―コーヒーカップとガラスの容器に分けて入れられてるんですね
伊藤:これは半分だけカップに入れて、残り半分はサーバーに残してるんですけど。コーヒーって温度帯で味がかなり変わるんですよ。なのでそれを効果的に楽しんでもらうためにこういう風になってます。こちらがさっき言ってたニカラグアのコーヒーですね。
―かなり酸味がありますね
伊藤:はい、コーヒーってよく酸味のあるなしとかで語られることが多いんですけど、僕らも仕事でやってるんですけど一個のコーヒー豆でも焙煎の仕方で味っていうのはころころ変わっていくんですよね。もちろんこれで酸味をなくすこともできれば、今みたいに残すこともできますね。
―コーヒーの名前の後ろに年数が書いてあったのですが、年ごとに味が違うんですか?
伊藤:年ごとに味が変わります!例えばお米だったりお酒だったりとか日本酒ワインとかに例えるとわかりやすいんですけど、その収穫した年でいいとか悪いとか語られることが多いじゃないですか。コーヒーもそれと同じでその収穫した年で同じ畑から取れてても全然味が違うんですよね。なので僕らは収穫した年をちゃんと商品名に着けて販売しています。なのでこの小冊子にも生産年のデータが載ってます。
―生産者の方とはどのように関係を作っているのですか?
伊藤:彼らとは年に一回は必ず会うような仲ですね。今年はいけなかったですけど(苦笑)。
三月に行くように準備していたんですけど。向こうと連絡とりながらまだ日本は大丈夫だよという風に言ってたんですが、渡航の二週間くらい前になって国境が封鎖されてしまって、それで行けなくなったという感じですね。
―お店ではドリップで淹れられているのですか?
伊藤:ドリップと今飲んでもらっているのがフレンチプレスですね。金属製のフィルターを使うものなんですけど、コーヒーって何らかのフィルターで濾してコーヒーを作るんですよね。ドリップだったら紙をつかって、ネルドリップだったら布を使うとか。そのフィルターの種類で結構味が変わるんですけど、うちでは金属製のフィルターと紙のフィルターの二つに絞ってお客さんに選んでもらうようにしています。
―その二つではどのように違いがあるのですか?
伊藤:金属製のフィルターを使うと、コーヒー豆が持ってる味の個性がそのまんまコーヒーになるんですよね。紙のフィルターを使うと味のコントロールが効きやすいというか、入れる人が味を調整しやすい感じになります。なのでよくもできるし、そうじゃない方向にも持っていけるのが紙のフィルターの善し悪しですね。
―(コーヒーをまた一口いただいて)少し温くなって味が変わりましたね。まろやかになったというか。
伊藤:意外とコーヒーって味が変わるんですよね。
―日本酒と似てますね。
伊藤:それでいうとフレンチプレスっていうのは、ちょっと温めたぬる燗みたいな感じになると思うんですよね。紙のフィルターはシャープに味が出やすいので、冷のあれに近いと思います。ここではそれも選べます。
―その日によってどっちがオススメとかありますか?
伊藤:ありますね。その日だったりとかお豆の種類だとかで。この種類だとこっちがいいとか。特にこだわりなかったらこっちのおすすめで淹れていいですかとかそういうのはありますね。
―この前のキャンプ(前記事参照)で外でコーヒー飲んだんですけどおいしかったです。
伊藤:おいしいでしょう外で飲むと。僕らもね、結構休みの日外に持ち出すんですよ。
―外で飲むならこの種類がいいなとかってありますか?
伊藤:あ~どうでしょうね。それよりは心境的な違いのほうが大きいような気はしますけど。やっぱりコーヒーって味わうものなんですけど、どこで飲むとか誰と飲むとか。そういった時のシチュエーションすべてがコーヒーの印象にかかわってくるので、外で飲むコーヒーと室内で飲むコーヒーっていうのは同じコーヒーでも違いますね。
伊藤:だから僕らコーヒーの味わい的に素晴らしいものを扱って入るんですけれども、それより大事なのはコーヒーが作られたストーリー、プロセスの部分だと考えているんですよ。どういう人がどこで作ってるだとかどういう風に作ってるのかとか、どういう思いで作ってるのかとか。そういうプロセスの部分ってコーヒー生産国での話なので、そういうのって消費国の日本からはほぼ見えないんですよね。でもコーヒーといえど口に入れるものなので、そこの部分は取り扱う身として知っとかないといけない。どういう過程で作られたかとかという、それを確かめに行くという意味もあって生産国に毎年行ってるような感じなんです。
―こちらで出してるコーヒーはブレンドとかはせずにそのまま出しているんですか?
伊藤:はい、ブレンドもちょっと作ってる分もありますけどでもほとんどは生産者ごとに分かれてます。同じ生産者でも品種が違うものとか。製法が違うものとか。そういう組み合わせもあったりします。
―水洗式とあともう一つありますよね。
伊藤:非水洗式、ナチュラルですね。いまはたくさんの種類があります。今日進月歩でたくさん出てくるんですよ。昔はその二つくらいだったんですけどハニープロセスっていうのが出てきて、空気を遮断するアンエアロビックっていうのが出てきて、たくさんですね。発酵を利用して二酸化炭素で圧をかけるカーボニックマセレーションというのもあります。わざとカビさせるペルラネグラ、ダブルパスとかできて。もう大変です。
伊藤:なんでそんなに沢山できるかというと、コーヒー豆というのはもちろんコーヒの木を栽培して収穫するんですけど、肥料を上げたりとか以外は基本的には木と環境が創るんですよ。収穫してその収穫してその実から豆を取り出してコーヒーを作る。ここが唯一人が手を加えられる部分なんです。なのでその過程っていうのはたくさんの製法が生まれていくんです。極端な話人がコーヒーを栽培して収穫して人が飲むまでに人が手を加えられる部分ってすごい限られているんですね。そこで作り手さんの意志っていうのはかなり出てきます。
―昔はコーヒーにめいっぱい砂糖入れて飲んでました(笑)
伊藤:生産国ではそうやって飲むんですよ。コーヒーっていうの生産国からしたら外貨を獲得する生活の手段なんですよ。なので、品質がいいものからどんどんお金に変えていくんですね。そうすると売れ残るのは一番品質が悪いのが残るんですね。それでそういうものは自分たちで飲むしかないんですけど、とてもそのままでは飲めないので最初から砂糖を入れていますね。
―そのレベルで質が悪いものしか残らないんですね。
伊藤:はい、それで黒い砂糖水みたいになるくらいまで砂糖を入れて飲んでます。実際砂糖入れないとおいしくないですね。砂糖入れると脳みそが勘違いしておいしいと思うんですけど(笑)。なので品質がいい僕らが日本で飲んでるようなコーヒーは生産国の人たちっていうのはほとんど知らないです。
コーヒーの話はこの後もカップの話や豆の保管の話などたくさんのことを教えていただきました。伊藤さんの「コーヒーを体験する場を作る」という気持ちが強く伝わってきました。
長崎で暮らす
―長崎でコーヒーショップをされている理由は何ですか?
伊藤:もともと長崎の出身というのもあるんですけど、人と人との距離感がいいですよね。近すぎず遠すぎずという距離感がちょうどよかったというのと、今これだけ物流とかインターネット環境とかが整っているので、ビジネスするうえでそんなに都会に出ていく必要性はないなって思ったのが一つ。あと長崎はコーヒーと歴史的なゆかりも結構深いので、伝来の地だったり。そういうところでこの町でしかできないことがあるんじゃないかというのを模索したかったのも一つ。
―お仕事していく中でほかの業種の方との交流はありますか?
伊藤:かなりあります。同じ食品関係だったら、東彼杵はお茶の産地なのでよくお世話になってる農家さんとかがいたり。個人的に畑に行って茶摘みを手伝わせてもらったりとか。僕はコーヒー農家にはなれないですけど、農業の喜び苦しみは分かっておきたいので、そういうのを体験させてもらいに行ったりとか。あとは食品を扱う仕事なので料理をする人とかにいろいろ勉強させてもらったりとか。やっぱりコーヒーやだからコーヒーだけやればいいってわけではないので。それはもうその道のプロたちから学ぶのが一番早いので。
―コーヒー以外で趣味などはありますか?
伊藤:これめちゃめちゃはまってますっていうのは正直なくて、休みの日もどっかでフラフラとコーヒー飲んでたりとかするんですけど。ただ海があって山があるので、外のアクティビティっていうのは尽きないですよね。特に時津に住んでて大村湾が近いので今年だったらよく「サップ」とかをしました。あれで今年の夏は特に息抜きしましたね。
今回近々サップをするとのお話だったので、その模様も取材させていただきました!
伊藤さんのお子さんは時津町でヨットをしており、一緒に海に出て楽しんだりされているそうです!
お子さんは今後全日本につながる大会に出場されるそうです。頑張ってください!
これからの展望
―これからどのようなことをしていきたいですか?
伊藤:コーヒーって生産者から消費者に行行きつくまでにたくさんの人が関わるですけど、そのサプライチェーンの中でも格差が激しいというかアンフェアな部分が多いので、それをきちっとなくしてサプライチェーンの中で不幸な人を作りたくないというのをしたいですね。搾取される人がいないようにだとか、労働量に見合わない報酬で働いている人が出てきたりとか。逆においしい部分だけを味わえる人がいたりだとかそういう構図は作りたくないなと。
―フラットにということですか?
伊藤:フラットである必要はないと考えています。幸せの基準とか人によってさまざまなんでフラットじゃなくていいんですけど、少なくともフェアにはしておきたいなという感じですね。
―ありがとうございました。
今回伊藤さんを取材して、長崎から世界の人たちのことを考えてビジネスをされている方がいることを知りました。世界の窓口だった長崎だからこそできることがきっとたくさんあるのだろうなと感じる取材となりました。
カリオモンズコーヒーではコーヒーのその裏にいる人やストーリーを感じてもらうことができます。ぜひ皆さん一度足を運んでみてはいかがでしょう?