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長崎からエールを

無理をしないからだづくりと、個人事業の話。vol.2┃筋肉バランス療法Flow・中島祐樹さん

テレワーク、副業の解禁など、働き方の多様性についての議論が交わされるようになった社会で「正社員よりフリーランス」なんて言葉をよく耳にするようになりました。

疫病禍となった2020年から2021年にかけて、フリーランス人口が約600万人も増加していることもまた、その話題性に加勢しているかのよう。ここ長崎でも、個人事業主という働き方を選ぶ人が増えているような肌感さえあります。

就職、起業、転職……働くことの岐路の数は人それぞれですが、個人事業をやってる人ってどんな人?そんな疑問を、身近な人にぶつけてみました。

今回のテーマは、”からだづくり”と”個人事業”の話

長崎市稲佐町で整体サロン「Flow」を営む、中島祐樹さんにインタビュー。後編となる今回は、中島さんが手掛けるダンベルパンと、個人事業についての話を中心に特集していきます。

Flow_中島祐樹さん

ダンベルパン・誕生秘話

中島さんと言えば!という表現をご本人がどう捉えるかはさておき、ダンベルパンなくして取材を終えるわけにはいきません。個人事業の話の前に、まずはダンベルパンの誕生秘話について訊きました。

中島:2019年くらいだったかな…プロテインを水や牛乳に溶かして飲むということが面倒に感じてしまって。お菓子もよく食べていたので、その感覚でプロテインを摂れたらと思ってスイーツづくりからはじめてみたんです。

長野:「パンがつくりたい!」と狙いを定めていたわけではなかったんですね。

中島:そうなんです。プリンの原液にドバっとかけてみたり……もう、ただただズボラですよね(笑)。商品化を考え始めたのはそのあとです。

長野:ご自身の「面倒だ」というところから、どう商品化へ考えが変わっていったのでしょうか?

中島:僕のようにプロテインを摂取したい気持ちはないけど、栄養素がほしい高齢者の方に向けたお菓子とか、食べやすいものがあればと思ったんです。つくるには厨房の免許が必要なんですが、自宅を改装するにも数百万円かかりそう。

だったら人に頼んだ方が早いかなと思って、いまダンベルパンをつくってくれている工場を訪ねたんです。チーズケーキやフィナンシェを試していただいたんですが、その後に「うちはパンも得意やけん、試してみましょうか」と言ってくださって。これがきっかけだったと思います。

長野:商標登録をされていると聴いたのですが、販売前には既に登録されていたんでしょうか?

中島:商標登録などに詳しい会社さんに力を貸していただきながら、全国的にそういったものがあるのかは調べましたね。「長崎県初」というのをつけても良いものなのか。もしちがった場合に訴えられる可能性もあるので、リスクを最小限に抑えておきたくて。

長野:中島さん、やはり準備をしっかりされてる…!

中島:名前だけで登録したり、ロゴも併せて登録したり、色々と選択肢もあるみたいなんです。僕は食品関係で「ダンベル」という名前で登録しているので、実はパン以外でもいいんです(笑)。

長野:なるほど……それって、費用にするとどれくらいかかるんでしょうか?

中島:正確には覚えていないんですが、申請と登録で5~6万円くらいかかった気がします。ただ、Rもつけられるので安心です!

Flow_中島祐樹さん

不登校の経験が、起業を目指すきっかけに

長野:続いて、個人事業主として開業するまでの話を聴かせていただきたいです。開業する方は「この仕事をしたい」と「自分で仕事をしたい」という2軸の選択肢から選ばれるのでは?と思っているのですが…。

中島:僕は後者ですね。ただ、事業内容についてはまったく考えていなかったので、学生時代は「バイク屋さんやりたいな」なんて思ってましたね。自分で改造してみたかった(笑)。

少し話が変わっちゃうんですけど、実は中学校1年生の夏休みから不登校だったんです。家から出ないので自律神経が乱れて朝に弱くなったり、身体が弱くなっていったんです。

長野:知らなかったです!それにもきっかけが…?

中島:「勉強も疲れるし、いい子ぶるのも好きじゃない」という感じの子どもだったんです。小学校までは普通に通っていたんですが、当時から「早く放課後にならないかな」と思っていて。小学校の校舎から中学校が見えていたんですけど、「あ、俺あそこには行かんわ」って。

長野:少し対称的かもしれないんですが…うちの弟は元々からだが弱くて、それが分かっていながら部活を始めたんですよね。中学生の頃に部活のしんどさに嫌気がさして「朝練に行きたくない」と言ったことがあったんですが、母が何とか連れ出そうとしていたのを覚えています。中島家ではそういうことはなかったですか?

中島:いや、うちも同じような感じでしたね(笑)。でも僕も猛反発して、メガネを叩き割ったりしてましたよ。

長野:それでも、無事卒業されて…?

中島:高校までは出席日数ギリギリで卒業して、それから長崎大学の水産学部に進学しました。大学は自分で学ぶことを決めたり、学習する内容に対する自由度が高いので僕に合ってたんだと思います。

その後、魚関係の仕事を目指すも周りの学生に圧倒され断念。「魚に対して、そこまで(の想い)はない」と判断した中島さんは、卒業後にコスモス薬品に就職。からだづくりに興味が芽生えた時期も重なったことで、社会人としてのファーストステージにドラッグストアを選ばれました。

副店長・中島「このままじゃ死ぬ」

中島:就職して1年が経った頃に副店長になりました。しかし、副店長になると1日通しで働かないといけないので、13時間立ちっぱなしなんてこともザラにあるんですよね。

長野:13時間立ちっぱなし!?

中島:それが毎日続いていたので、「このままじゃ死ぬな」と思うようになったんです(笑)。筋トレを始めたきっかけは、間違いなくここでした。

長野:仕事を辞める、という選択肢はなかったんでしょうか?

中島:ある程度お金ももらっていたし、もう少し勉強してから辞めてやろう!みたいな感じだったと思います。就職したときから「勉強したら自分の道を進むんだ」と決めていたので、医薬品の知識や経営のノウハウ、そういったものを学びながら起業を考えていましたね。

それから退職して、長崎に帰ってきて、親戚が通っていた整体で施術を受ける機会がありました。そのとき、「これすげえ」と衝撃を受けたんです。

長野:最初はお客さんとして、整体に出逢ったんですね!

中島:これなら自分で学んで、仕事としてやっていけるんじゃないかと思いました。民間の資格ではあるんですが、2年ほど佐賀に通って勉強しました。バイトを掛け持ちして、週末には佐賀に通って、空いた時間で開業の準備をする。

かなりハードではあったんですが、起業準備に関しては時間をかけてゆるく進めていたので、その間で横の繋がりもできました。開業後しばらくは、その繋がりからイベントに出店させてもらったり。今では、商工会の方でもお世話になっています。

▼中島さんが起業の際に活用した「長崎県よろず支援拠点」
https://www.ngs-yorozu.com/

Flow_中島祐樹さん

一人ではできないことも、コミュニティで実現

長野:起業準備はゆるく、と仰ってましたが、時間をかけたことで基盤ができている風に見えます。一方、課題として感じる部分もあるのでしょうか?

中島:どうやって知っていただくか。これはずっと尽きない悩みですね。テレビに出していただいても、波は長くとも1ヶ月。

長野:短期的に周知されることはあっても、そこから継続的な利用に繋げていけるかは別の話ですよね。メディアでの露出をどう生かすかは、自分次第な部分が大きい気がします。とは言え、それにも限界がありますよね…!

中島:意外と、新聞の反応が良かったりもするんです。最近だと、記事がWebで公開されたりもするので。発信は僕の苦手分野であり、永遠の課題です。それでも、横の繋がりに助けられながら少しずつ広がっている気もしています。

ただ、そういう意味ではコミュニティがあるのはすごくありがたいですね。自分ができないことを気軽にお願いできる環境があって、自分だけだと広げられない幅が見えてくるのは大きいです。

生きるために、夢はいらない

自分で地道な努力を続けながらも、繋がりを大切にしながら個人事業の道を歩んできた中島さん。最後に、今後の展望について伺いました。

中島:働きたくても働けない人。精神的な障がいを持っているけど、短時間なら集中できる人の雇用を創出したり、僕と同じような境遇にあっても、何かしら自分でお金を稼いで楽しく暮らすための発信やセミナーをやったり。そこが僕にとって一番やりたいことな気がするんです。

目指す先もなかったから自傷もしてたし、いつどうやって死のうかって考えてました。これって、当事者は周りには打ち明けられないんです。

「夢を持て」「やりたいことを見つけよう」とよく耳にしますが、僕にとっては乱暴な言葉です。その気持ちを抱いてきたからこそ「自分が働ける場所」を模索してきましたし、そういうのをほぐしていきたいというか。

生きるために、夢なんていらないですよ。

長野:僕自身、やりたいこともなく進学や就職をしたんですが、いまの学生さんたちを見ているとしっかり自分の人生と向き合ってる。それにどこか負い目を感じていたんですが、今の中島さんの言葉ですごく気持ちが楽になりました。

中島:やりたいと思えることが見つかったら、そのとき楽しめばいいと思います。僕も開業は30歳手前。開業年代としては遅い方だったけど、いまの仕事を楽しいと思って続けられています。仕事をしてる感覚がなくなる、そんな人たちが増えてもいいのかもしれませんね。

開業までのストーリーはもちろん、赤裸々に人生を話してくれた中島さん。取材において「ほぐす」役割はインタビュアーにあると思っていますが、僕自身も中島さんにほぐしていただいた気がします。

会社員と個人事業主。

それぞれにメリットがあるので一概にどちらが良いとは言えませんが、自分自身にあった道を模索し続けていくことが大切なのかもしれません。

それが学生でも、大人でも。

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定休日 水曜日
住所 長崎市稲佐町34-8(駐車場1台)

ライター紹介

無理をしないからだづくりと、個人事業の話。vol.2┃筋肉バランス療法Flow・中島祐樹さん

ショートショート長崎/ながさき若者会議

長野 大生

長崎市出身のライター・編集者。2021年からは、長崎を舞台にした短編小説集を制作するプロジェクト「ショートショート長崎」の代表として、ショートショートの普及活動も行っています。