“長崎の香り” と聞いて、皆さんは何を思い浮かべますか?
代表的なのは、四季を問わず、ふと鼻をかすめる潮の香りや、カステラ工房の甘くやさしい香り。秋にはまちを彩る金木犀の香りや、寒い時期にはスパイシーな中華料理の香りを思い出す方も多いのではないでしょうか。
このように香りと記憶が強く結びつくことを 「プルースト効果」 と言いますが、誰かに聞かれない限り、“あの時のあの香り”を思い出すことは、すぐには難しいですよね。
とはいえ、暮らしの中から香りがなくなるのはとても寂しい気も。
考えてみると、香りという要素に暮らしを支えられている場面も少なくありません。例えば、コーヒーの香りがリラックスや集中力を促してくれるように、ガムでお馴染みのハッカやミントの香りは、運転中や勉強中の眠気覚ましにも効果的ですよね。最近では、お気に入りの花を飾ったり、アロマを焚いたりする方も増えてきたように感じます。
わたしたちの生活に密接に関わる“アロマ=香り”。その視点から、長崎暮らしをより豊かにしてくれる、香りのプロ。今回は、アロマスクール講師・アロマ空間コンサルタントの浦山純菜さんをご紹介いたします。
香りの空間演出
アロマスクール講師・アロマ空間コンサルタントの2つの肩書きを持つ、浦山純菜(あつな)さん。アロマを用いて健康維持への役立て方や幅広い利用法を教室の参加者に教える一方で、企業や個人向けに、香りを用いた空間の演出を行っています。
浦山さん「香りを用いた空間演出を行う際は、ディフューザーと呼ばれる機械の中にアロマオイルを入れて、香りを出しています。そこから出る香りで、空間自体のイメージや企業のブランディングをサポートするのが、アロマ空間コンサルタントのお仕事です。」
― 具体的に、どんな場面でサポートしているか教えていただけますか?
浦山さん「例えば、ハウスメーカーさんのモデルハウスの入り口だったり、お客様と商談されるスペース。そこにディフューザーを置いていただくことで、その会社のイメージフレグランスを創出しています。」
浦山さん「クライアントさんや、家を買いに来られる一般のお客様から、香りのフィードバックを頂いたり、『これは何の香り?』と興味を持っていただくこともあります。加えて、社員さんのモチベーション向上にも効果があって、特に女性社員の方から嬉しいお言葉をいただきます。商談スペースに来たお客様だけじゃなく、社員の皆様のストレスケアやメンタルケアに香りが役に立っていると実感する瞬間に、とてもやりがいを感じています。」
企業全体のイメージ構築のサポートや、さらには社員の方のメンタルケアまで行う、アロマ空間コンサルタント。浦山さんがアロマの分野に興味を持ったきっかけを聞いてみました。
小さい頃から身近にあったもの
浦山さんが、アロマインストラクターになったきっかけは二つ。
一つは、体調不良による入院でした。
浦山さん「転職を何回も繰り返している時期があって、その頃は仕事詰で自分の睡眠時間を削って働こうとしていたんです。入院をきっかけに自分の天職を探すと決意しました。」
札幌出身の浦山さんは、ラベンダーやミント、カモミールやハーブが庭に咲き誇るお家で育ちました。祖母や母のハーブセラピーやアロマセラピーが浦山さん自身の健康を支えてくれていたことを、入院をきっかけに思い出し、「自分の天職はこれだ。」そう感じました。浦山さんは、退院後すぐに本屋さんに行ってアロマの本を購入。「気がついたらアロマの先生になっていた。」と語ります。
浦山さん「体を壊した時に、自分に無理をかけすぎたり、自分のことを大事にしないっていうのはやめようと思ったんです。入院、そして家庭での暮らし。この二つが今の仕事を始めたきっかけです。」
暮らしに役立つアロマセラピー
浦山さんが掲げるのは、「暮らしに役立つアロマセラピー」
小さい頃から暮らしの一部としてあったアロマで、色んな人の役に立ちたい。そんな思いから、薬膳漢方×アロマ季節のお茶会(セミナー)の開催を行ってきました。定期的に開催するセミナーでは、年間で250名近くの方が参加するようになり、浦山さんの生み出すアロマに魅了されてきました。
浦山さんの暮らしに当たり前にあったアロマ。場面が変われば、「高くてオシャレなもの」として扱われることも・・・。
浦山さん「アロマの敷居を下げたいっていう思いもあるんです。私の暮らしの中にあったのが、アロマテラピーだから、もっと色んな方に身近に感じてほしいと思っています。」
その思いを長崎の人に伝えるべく、様々な地域のイベントでも出店を行っています。
「出島宵市」では、出島の歴史や出島周辺の風土から連想した香りをアロマで再現し、販売を行いました。
また、「星月夜展」というイベントではゴッホの絵画、“星月夜”をテーマにした、1日限りのアロマを展示し、来場されたお客さんに星月夜の香りを体験できる空間を創出しました。
― そのような香りを作る際、どのようにしてイメージが湧いてくるんですか?
浦山さん「テーマにするコト・モノのお話を紐解いていく感覚です。例えば、出島だったらどういう歴史があるのか。出島宵市であれば、どんな人たちが来て実際にどんな屋台が出るのかとか。中島川ってどう流れていて、上から見るとどんなフォルムになっているのかとか。この紐解き方をストーリーアロマって言うんですけど、色んな細かい部分まで気を配りながら最終的に作る香りのイメージを固めていきます。」
― ストーリーアロマ。題材にするモノの歴史や個性を紐解きながら、それに相応しい香りを連想していくんですね。
アロマスクールの講師をしながら、イベント開催・イベント出店などを行い、現在はアロマ空間コンサルまでを手がけるようになった浦山さん。長崎でアロマの仕事を始めるようになってから、まもなく3年目に入ろうとしています。
香りあるまち長崎
― 今後の目標ってありますか?
浦山さん「あります!『香りあるまち長崎』をテーマに、五感体験型のウェルネスツーリズムを実現したいです。旅行で長崎に来た人たちが、心身ともに癒されて地元に帰っていってもらえるような活動をこれから実行できればいいなと思っています。また、遠くに旅行に行けない今、感性に触れる身近な旅も計画していきたいです。」
今回は、アロマスクール講師 兼 アロマ空間コンサルタントの浦山純菜さんをご紹介いたしました。
暮らしと働きって、本当に密接に関わり合っているんだろうなと感じます。小さい頃からの習慣とか、日常に潜んでいた当たり前のコトが、社会や地域で誰かを喜ばすことのできる仕事に変わったり。逆に、今の仕事が、自身の暮らしの質に大きく影響を与えたり、豊かにしたり。
働くことや暮らすことに何か違和感を感じたときは、過去の当たり前だった暮らし方に目を向けると、ヒントが得られる瞬間があるのかもしれません。
浦山さんが香りや目の前のお客さまに向かう真摯な姿勢から、とても大切な気づきを頂きました。
私もりきちがナガサキエールにて更新する記事では、「暮らしと商い」をテーマに、長崎で働き暮らす方をご紹介していきます。様々な職種の方が長崎で商いを始めるに至った経緯や想い、また、長崎での暮らし方や関わり方をヒントに、読者の皆様が、長崎での働きと暮らしをより豊かにするきっかけにしていただけると嬉しいです。
最後まで読んでくださりありがとうございました!
次回もお楽しみに!
浦山純菜さん
アロマスクール講師/アロマ空間コンサルタント